「お前達は柚子にとって害悪にしかならない。とっととサインしろ」


 父親を威圧する玲夜に、ようやく冷静さを取り戻してきた瑶太が声を掛ける。


「どういう事ですか。どうしてあなた様があの女の味方をするのです?」


 次の瞬間、瑶太は青い炎に包まれた。


「うあぁぁ!」


 ゴロゴロと床を転がる瑶太に花梨が駆け寄る。


「瑶太!」

「柚子の痛みを知れ」


 瑶太を見下ろす目は凍るように冷たい。その目を次に、ガクガクと怯える父親に向ける。


「俺を本気で怒らせる前にサインした方が身のためだぞ」


 玲夜が父親を脅している間に、弁護士が祖父に書類を渡して必要な場所にサインをさせている。


「玲夜様。こちらは終わりました。後はそれだけです」


 それ、と言われた父親は、玲夜に睨まれて顔色が悪い。

 玲夜は父親の胸倉を掴むと、強引に書類の前に座らせる。

 弁護士がペンを差し出す。

 父親は取るのを躊躇っていたが、チラリと見上げた玲夜の冷たい眼差しに、恐る恐るペンを取った。


「こちらとこちらにサインを」


 父親は震える手でペンを走らせる。

 柚子はそれを色々な感情がない交ぜになった気持ちで見ていた。