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 帰ってきた柚子の家。
 帰ってきてしまったと言う方が正しいかもしれない。

 出来れば帰ってきたくはなかった。

 けれど……。

 隣に立つ玲夜を見上げる。
 ぽんぽんと、頭を撫でられる。それだけで元気づけられた気がした。


 一度深く深呼吸をして、玄関の扉を開けて入っていく。

 その後を玲夜、そして、鬼龍院専属という弁護士が付いてくる。
 この短い時間でどうやったのか、養子縁組に必要な書類を全て用意してしまった。
 後は両親と祖父母のサインだけ。

 そこはさすが鬼龍院というところか。


 リビングに近付くと、何やら言い争う声が聞こえてくる。
 玄関に靴があったから、きっと祖父母だろうと思ったが、リビングに入れば案の定、両親と祖父母が言い争っていた。


「お前達はそれでも柚子の親なのか!?」

「親父達には関係ないだろう」

「関係ないわけがあるか!柚子は俺の孫でもあるんだぞ!」

「あの子は花梨に手を上げたんですよ」

「それだけのことを花梨がしたんでしょう。それなのに柚子の話も聞かないで、あの子だけを悪者にして!」


 どこまでも花梨を優先する両親と、柚子の事も考えてくれている祖父母。
 その意見が噛み合うことはない。