素早く着替えて、外で待つ玲夜の元へ行く。
 そのまま後について行くと、食事が用意された部屋に案内され、朝食とは思えない、まるで料亭のような食事を取った。


 一息吐いてお茶を飲みながら、これからどうしようかと考えていると、玲夜の元に昨日の年配の男性が紙袋を渡した。

 それをぼんやりと見ていた柚子の所へ、今度は玲夜がその紙袋を渡してくる。


「開けてみると良い」


 言われるまま中を開けてみると、そこには昨日玲夜に渡した、祖父からもらったワンピースが入っていた。
 しかも、引き裂かれていた所は綺麗に繕われ、見た目には分からないほど。


「これっ」


 玲夜を見れば、優しく微笑む顔が向けられていた。


「昨日急いで繕わせた。大事な物だったのだろう?」

「っ、はい。あり、がとっ……」


 鼻がツンとして、涙が浮かんでくる。

 祖父にどう謝ろうかと思っていたのに、ここまでしてくれて、あまりの嬉しさに思うように言葉が出ない。

 直されたワンピースをギュッと抱き締めてお礼を言った。

 玲夜は笑みを浮かべ、ワンピースごと柚子を抱き寄せた。


「お前のためならこれぐらい容易いことだ」

「鬼龍院さん……」

「玲夜と呼んでくれ。俺の唯一にはそう呼ばれたい」

「……玲夜、本当にありがとう」


 祖父母以外で、こんなに嬉しい気持ちにしてくれたのは玲夜が初めてだ。