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 翌朝、寝ぼけ眼で起き上がった柚子は、一瞬ここがどこだか分からなかった。

 すぐに昨日のことを思い出して、飛び起きた。

 やはり昨日のことは夢ではなかったようだ。


 これからどうしたら良いかと部屋の中をうろうろとしていると、部屋の扉がノックされ、玲夜が入ってきた。


「おはよう、柚子」

「おはようございます」


 朝から眩しいほどの美しさ。
 綺麗すぎて怖さを感じるほど。
 表情豊かというより、クールであまり表情が表に出にくいからだろうか、余計にそう思う。
 けれど、時折見せる微笑みは破壊力抜群。

 思わずくらりとしてしまうほど、玲夜に見惚れてしまう。


「よく眠れたか?」

「はい。ありがとうございます」


 突然家に押しかけて、着替えや寝床まで用意してくれて、感謝しかない。


「着替えを持ってきた」


 そう言って渡されたのは、昨日着ていた服ではなく、見覚えのあるロゴの紙袋。

 祖父が買ってくれたワンピースを売っている、人気ブランドのあのロゴだ。
 中には服がいくつか入っている。


「あのこれ……」

「気に入らなかったか?」

「いえ、そうじゃなくて……」

「なら早く着替えて食事にしよう。外で待っている」


 さっさと出て行ってしまった玲夜。


「これ着ていいのかな?」


 けれど、渡されたということは着て良いという事なのだろう。
 いつの間に用意したのかは分からないが、他に服もないので着替えることにした。