女性は洗濯物を持って出て行った。

 一人になってようやく一息吐けたような気がする。

 ベッドの上にばふんと飛び乗る。
 寝そべって、右へ左へ転がって、しばらくしてからようやく気がすんだ。

 今日は色んな事がありすぎて、家での大騒ぎが随分前のことのように思える。


「花嫁……」


 自分をそんな者に選ぶようなあやかしがいたということが驚きだ。

 まだ実感は湧かないが、あんなに美しい人に愛そうと言われて舞い上がらないわけがない。

 甘いご褒美を目の前に突きつけられているような気分だ。
 信じて良いのだろうか。

 柚子としては、信じたい。
 あの紅い瞳に嘘はなかったと。

 この時すでに、柚子は囚われていたのかもしれない。あの紅い瞳に。