頭を上げた使用人らしき着物を着た人達が、柚子を目に留めて驚いた表情をする。

 その中で一番年配の男性が恐る恐る玲夜に問い掛ける。


「玲夜様、そちらのご令嬢は?」

「俺の花嫁だ。俺だと思って丁重にもてなせ」

「なんと!それは一大事。ああ、何故もっと早くご連絡して下さらなかったのか。そうすれば万全の体制でお出迎え出来ましたものを。
 すぐに女性の身の回りのものをご用意して……。はっ、大旦那様にもご連絡しなければ!」

「落ち着け。とりあえず柚子を休ませたい」

「おお、私としたことが、失礼致しました。すぐにお飲み物を用意いたします」


 すぐさま動き出した男性に合わせて、他の人達も動き出す。

 玲夜は玄関で靴を脱いだ柚子を再び抱き上げて長く続く廊下を歩き始めた。

 また抱っこ。


「あの、一人で歩けるから」

「黙って抱かれていろ。自分の花嫁を見つけて、これでも浮かれているんだ」


 あやかしにとって花嫁はとても大事な人らしいと、花梨を見て分かってはいたが、それが自分に向けられるとなると何だかむず痒い。


 長い廊下を右に左に、どれだけ広いのか。
 確実に迷いそうな中を歩いて、やっとたどり着いた部屋。

 和風の外観に反して、中の部屋はモノクロで統一された洋室だった。