愛されたいと思った。
 花梨のように。

 孤独を拭いきれないあの家で何度も願った。花嫁のように誰か自分を愛してくれないかと。

 けれど、そんな都合のいいことなんてあるはずがないと諦めていた。

 けれど……。


「あなたは、私を愛してくれる?」


 それは柚子の切なる思いだった。


「ああ。お前を、お前一人を愛そう。俺の花嫁」


 ぽろりと涙が一滴落ちた。


 一人は悲しい。いないものとされるのは辛い。
 存在を肯定して欲しい。

 この目の前の人は自分を必要としている。
 そう思ったら、自然と涙が溢れてきた。

 玲夜は何も言わず、柚子をその腕の中に引き寄せた。

 されるままになってしばらくすると、車が止まった。


 扉が開いて外へ出る。

 日本家屋の巨大なお屋敷が目の前にそびえ立つ。

 あまりの壮観さに開いた口が塞がらない。


「凄っ」

「こっちだ」


 玲夜に手を引かれて屋敷の中へと入っていくと、何人もの人に出迎えられた。


「おかえりなさいませ、玲夜様」


 旅館のお出迎えのように綺麗なお辞儀で出迎えられて、柚子は目を丸くする。


「あの、ここは?」

「俺の家だ」

「ほぁ」


 さすがあの鬼龍院と言ったところか。
 柚子の生きてきた世界とは別世界だ。