「凄い……」

「他に痛いところはないか?」


 柚子は顔を横に振って否定した。


「……あなたは鬼なの?」

「そうだ」


 肯定されて、柚子も納得する。
 その美しい人間離れした整った容姿に。
 瑶太ですら及ばない美しさ。

 鬼は、あやかしの中で最も強く美しいあやかしと言われている。
 あやかしが人の中に現れるようになってからは、政治経済すらも掌握していると噂である。

 鬼龍院は、人間もあやかしも含め、日本のトップに立つ家柄だ。


「どうして……?」

「何がどうしてだ?」

「えっと、この状況というか。どうして私を助けてくれたり、私が今ここにいる状況がどうしてかと」

「言っただろう。俺の花嫁だと」

「花嫁……。私が?」

「そうだ」

「あなたの花嫁?」

「そうだ」


 そんな馬鹿な。
 けれど、玲夜の瞳は嘘を言っているようではない。真剣そのもの。


 何か言葉を発しようとして口を開けたが、何も言葉が出なくて再び口を閉じる。

 自分が花嫁?
 花梨のように自分も……?


「信じられないか?」


 玲夜の手がそっと頬に添えられる。

 
 甘さを含んだ眼差しが柚子を捕らえる。