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 柚子はどこにでもいる普通の少女だった。

 両親と妹の四人家族。
 公立の学校に通い、普通に友人がいて、普通に生活している。


 普通だと思う。
 特に不自由なく生活はできていた。
 しかし、柚子はあまり両親から愛されているという実感はなかった。

 幼い頃はどうだったか分からない。
 けれど、物心がついた時には、すでに両親の関心は妹の花梨のものだった。

 しっかり者で人に頼ることを苦手とした柚子と違い、甘え上手で可愛らしくいつも笑顔の花梨を、両親がことさら可愛く思ってしまうのは仕方のないことだったのかもしれない。

 全く愛されていなかったわけではないと思う。
 虐待をされたわけでもないし、きちんと食事も必要な物も用意されていた。
 けれど、花梨と比べたらそれほどの興味を柚子に見いだせなかった、ただそれだけ。
 

 それでも、柚子はお姉ちゃんだからと、両親に甘えることができなくても、甘える花梨とそれを許容する両親の姿に寂しさを感じていたとしても、自分は姉だからと我慢した。

 いつか自分にも興味を持ってもらえる日を夢見て。


 しかし、妹の花梨が妖狐の花嫁に選ばれたことで、両親の柚子と花梨の扱いの差が顕著となった。