「いいでしょう。お姉ちゃんばっかりずるい。いつもお祖父ちゃん達はお姉ちゃんにばっかり物を買ってあげて。
 私にはほとんどプレゼントなんてしてくれたことないのに」


 それは両親が柚子にはしないから、祖父母が代わりに愛情を注いでくれてるだけだ。
 なのに、それを理解せず、両親と瑶太から散々甘やかされて、それでもなお足りないと要求するのか。
 柚子の苛立ちは募る。


「花梨はお父さん達や恋人からたくさんプレゼントされてるでしょう。
 服だって私のを借りなくたってたくさん持ってるじゃない」

「私はこれが着たいの」

「だったら、恋人におねだりしたら?上手でしょ、物をねだるの」

「何それ。私が物乞いみたいな言い方して」

「いいから、それを返して!」


 柚子は花梨の持つワンピースに手を伸ばし、引き寄せる。
 しかし、花梨も手放すまいと引っ張る。


「お姉ちゃんってば、私に嫉妬してるんでしょ。
 私が特別な存在だから。お父さん達も瑶太からも私は愛されてるけど、お姉ちゃんのことはそうでもないみたいだし。
 羨ましいから私に意地悪するんだ」


 花梨のその蔑むような顔に、柚子は言いようのないショックと怒りが込み上げてきた。
 図星だったからかもしれない。
 特別な花梨とそうではない自分が。
 そして、それを認められほど、まだ柚子は諦めきれていなかったのかもしれない。


「いいから返して!」


 思い切り引っ張る。

 すると、ビリッと布の破ける嫌な音が耳に響いた。