さっさとこの場から離れるために、手早く食器を片付けると、花梨を中心に盛り上がる人達のいる場所を後にする。
そして、いつもより時間を掛けてお風呂に入りながら、その間に瑶太が帰ってくれないかという希望が胸を占める。
まあ、無理だろうが、お風呂場はこの家で柚子が逃げられる数少ない場所だ。
ほっと一息吐く。
自分はいったいいつまで、こうして家族から逃げ続けるのだろうか。
祖父母もいい年齢。いつまでも助けてくれるわけではない。
祖父母がいなくなってしまったら、本当に柚子は一人だ。
それが、この上なく怖い。
けれど、今からそんなことを考えていたって仕方がない。
高校を卒業したら、どこか遠くの大学に進んで、家を出て一人で暮らそう。
そうすれば、こんな風に疎外感に苦しみ、煩わされることもない。
家とは縁を切るつもりで。
「ふう……」
少し長湯しすぎたかもしれない。
お風呂から出て、髪や体を乾かす。
顔を合わせないようにリビングには行かず、そのまま自分の部屋へと向かうと、何故か少しだけ部屋のドアが開き、電気が付いていた。
消し忘れたかと、特に不思議に思わず部屋に入ると、何故か部屋に花梨がいた。
そしてその手には、先日祖父からもらった誕生日プレゼントのワンピースがあり、鏡の前でワンピースを体に合わせて見ている花梨。