その日は祖母がケーキやご馳走を用意してくれて、早めの誕生日パーティーを祖父母と祝い、土日は幸せな気持ちで過ごした。
けれど、いつまでも長くは続かない。
嫌でも、平日になれば家に帰らなければならなくなる。
相変わらず、柚子を取り残して会話を弾ませる両親と花梨を、壁の外のことのように感じながら夕食を取る。
その後、食器の後片づけをしていると、家のチャイムが鳴った。
インターホンから聞こえてくるのは瑶太の声。
花梨は嬉しそうにしながら玄関に走って行った。
瑶太はこうして、暇を見つけては花梨に会いに来る。
毎日学校で会っているのだからじゅうぶんだろうにと、柚子は思うのだが、それでは足りないらしい。
あやかしの、花嫁への執着はそれだけ重い。
本当は一緒に暮らしたいようだが、花梨がまだ未成年で学生ということで、その話は進んでいない。
とっとと出て行ってくれれば、こちらも少しは過ごしやすくなるのに。
そう思ってしまうのは、姉として最低なのかもしれないと柚子は自嘲するも、そう思わずにはいられなかった。
すぐに戻ってきた花梨の横には瑶太がおり、二人の手はしっかりと握られている。
二人の仲が良いのは両親達にとっては喜ばしいことだが、柚子はそんな二人を見るのが苦痛で仕方ない。
愛されない自分を知らしめられているようで。