「違いますよ。私には除霊は出来ません」

霊媒師だと特定したのだが私の読みは外れた様で、あっさりと否定された。霊媒師では無いのだとしたら、他に何かあるのだろうか?

「え……?」

「除霊は出来ませんが消滅なら出来ます。消滅した魂は二度とこの世には存在出来ませんが…」

消滅なら出来る?とは何なのだろう。益々、謎が深くなる。この人は一体、何者なんだろうか?

「…貴方は何……者?」

声を絞り出して問いかける。公園の電灯と月明かりに照らされ、妖艶に口角を上げて微笑む彼の額には三角の突起が出ていた。

「私は鬼の末裔です。名は鬼神 皇大郎(おにがみ こうたろう)と名乗っています」

「お、に…なのですか?」

「はい、鬼です。鬼にもランクがありますが、鬼の一族をまとめている鬼神という存在です」

彼の話を詳しく聞いてみると彼は鬼の末裔であり、世間一般では国王や天皇の様な鬼の中でも高貴な存在みたいだ。現代の世の中において、鬼が存在しているだなんて信じ難いが、先程の現象と額の三角の突起を見れば信じてしまう。

「……普段は角?は隠されてるんですか?」

「そうですね。僅かな力で角は隠せますから」

「いつもスーツ姿ですが何かお仕事されているんですか?」

「してますよ。IT企業に務めて居ますが派遣社員です」

「そうですか…」

昔から存在すると言われている鬼が、現代の世の中では派遣社員としてIT企業で働いているとは…時代の流れには鬼も勝てないと言う訳か。

鬼のイメージと言えば、鬼ヶ島の悪い鬼や一寸法師に出てくる鬼とかしか思い浮かばない。あやかしの中でも頂点と崇められている天下の鬼がまさかのIT企業で働いているなんて、私の他に誰が知っていると言うのか?イメージが違いすぎて私に笑いをもたらした。