「ねーねー!薫っ!」
 「何ー?」
 「誕生日なのにお願いがあるんだけど………朝ごはん食べたい」
 「確かにお腹空いたよね。いいよ」
 「やったっ!」


 ミキはそういうと、両手を挙げて喜び、ベットから飛び降りた。そこまで喜ぶとは思わず、薫は子どもみたいな彼を見てまた笑ってしまうのだった。
 

 薫は着替えを終えた後に、ミキのリクエストの物を作った。
 薫の料理をしている姿を見て、ミキは微笑んでいる。

 「今日は薫の好きなところに行こう。天文台に行って星を見て、それからチーズがおいしいグラタンのお店に行こう。あ、夕食の前にランチだよねー。でも、今食べたばかりだから、美味しいケーキとかパフェを食べようと思ってたよ」
 「天文台かー。最近いってなかったから嬉しいな」
 「本当は本当の星をまた見たいよね」
 「うん………森に行ってね!今度、地元に戻ってもいいね」
 「薫も戻りたい!?」
 「うん。あんまり帰ってないから行きたいな」


 そういうと、ミキはとても嬉しそうに薫に駆け寄った。そして、甘えるように後ろから薫を抱きしめた。


 「もう、ミキ。今、料理してるから危ないよ。火傷する」
 「でも、嬉しいから」


 ミキはどうして、こんなにも地元に帰ること喜んでいるのか。彼も久しぶりに返って昔懐かしい場所を巡りたかったのかもしれない。
 

 薫の地元は、今住んでいる場所から車で2時間ほどにある田舎らしさが残る町だった。電車の駅がある場所はそれなりにビルがあり、住みやすさがある。けれど、少し先を見れば山や海があり、小さな子ども達の遊び場は自然の中という、田舎だった。
 薫の両親はまだそこに住んでいるけれど、年末しか帰らないし、子どもの頃に遊んだ山などに登ることはなかった。
 薫とミキは、子どもの頃からよく森で遊んでおり、こっそりと夏祭りを抜け出して山の上で星空を見たのを今でも覚えていた。
 満点の星空は、いつも見ている星よりも遥かに光り輝いており、見たこともない小さく繊細な光を見せてくれる、淡い星がまだまだたくさんあるのだと薫はその時に知った。

 それから、薫は星が好きになった。薫が趣味で書く絵には星空がよく登場するぐらいだった。


 「薫?ごはんは?」
 「え、あ………あぁ!!………危ない、もうちょっとで焦げちゃうところだった」


 薫はすぐにコンロの火を止めて、出来上がったものを皿に装った。