プロローグ
時々、夢を見る。
昔よく遊びにいった小さな森を、身軽に走る男の子を。いや、女の子かもしれない。
顔はわならないけれど、私がその子の背中をずっと追いかけている夢だった。
その子の笑い声と、自分が楽しくて笑っているのがわかる。
そんな自分が小さくなって、ただ森を走り回る。平和で穏やかな夢。
それなのに、その夢はどこか切なくて、悲しい。
目が覚めると、ボロボロと泣いているのだ。
けれど、しばらく経つとその夢の事を忘れてしまう。
寝ている時に見る夢などそんな物かもしれない。
その夢を見ると、「あぁ、またこの夢だ」と思い出すぐらいで、他に変わったことも起きる事もなかった。
だからこそ、年を重ねる毎にその夢の回数が多くなっている事に気づくはずもなかった。