それから約20分。


自分の早い判断で処置したおかげか、過呼吸は徐々におさまり、とりあえず一山越えた。


落ち着きを取り戻し、冷静になりかけた時。


二人が大好きアーティストの曲が流れていたのに気付き、耳を傾ける。


「会いたくて。会いたくて」


何度も繰り返されるフレーズ「会いたくて」。


一秒も離れたくない悠希があたしの隣にいてくれる。


愛して止まない君がいる。


「だいぶ落ち着いたみたいだな」


悠希の優しい声に瞑っていた目を開け、感じる視線の先に目を向ける。


「…うん。だいぶ落ち着いた」


「歩さぁ」


「話す」


「ん?」


「ちゃんと話すよ」


「そんなに重い話?」


「重いっていうか」


「…」


「引くかも」


神妙さを感じたのだろう。


悠希はしなやかな指を差し出し、無言であたしの手をそっと握ってくれた。