「お前ひどっ!歩は俺を男として見てねえよな。本当に口悪っ。」


挨拶変わりにわざと汚い言葉を浴びせたが、春斗はあたしがどんな女か知っていて冗談だとわかり笑う。


「おめぇ玉ついてねえだろが!メスだろ、メス」


「そうそう俺はメス…っておい!」


二人の笑い声が部屋中に響き、さっきまでの不安感と心の曇りは瞬く間に晴れだした。


気を紛らわせ、一人の不安はかき消す。


春斗だけではない。


たくさんの友達はあたしから呼び出しをくらい、犠牲になっていた。


“♪~♪♪”


「おう。携帯鳴ってるぞ」


「あ~客じゃね?ん、あれ、違うか?」


客専用の着信音ではなく聞き慣れない着信音だと気付き、溜まっていたメールを順に見ていく。


「客、客、客、客…客!?ん?んんぅ!?」


:『メール届いたかな?』


名前が書かれているわけでもない短い文章を見て、あたしの頭によぎったのは昨日の出来事。


「歩~どうした?」


「バッ、バッグ、バッグの紙!!お前気がきかねえな野郎だな!バッグどこだよ!」


「この酔っ払い女!そこにあんじゃねえか」


春斗は布団の足元に置かれたバッグを手に取り、あたし目掛けて投げる。


「紙!紙ぃい!!あったぁぁぁ!」


急いでバッグ内を探り、慶太さんに貰ったメモとアドレスを比較した。


「やべえ…慶太さん名前くらい書こうよ…」


慶太さんの顔を思い出し、自然と口元が緩む。


「歩つぅあぁ~ん?」


「うっせんだよ!!慶太さんからメールきたんだよ!慶太さんだぜ?うお~ぉぉ!!」


興奮しているあたしは、隣に座る春斗の背中を意味不明にバシバシ叩きまくる。


「なんなんだよお前は!?」


「昨日ありがとうございました?違うなぁ~会いたい?なんつってえ♪」


携帯画面に何度も唇を押し当てキスし、春斗がいるなんて忘れ自分の世界へ入り込む。


真剣な顔付きで携帯にメールを打ち込み、自分が打った文章を読み直した。


『昨日は本当に本当に楽しかったです。慶太さんに会えて嬉しかったよ。必ずあたしと遊んでくださいね。約束は守る為にあるのだ♪歩より』