喧嘩をした翌日。


泊まっていった悠希があまりにも外に行きたがり、そのしつこさは絶対出掛けると決め込んでいるようで、結局あたしは根負けし、専門店がたくさん入っているデパートへ連れて行かれた。


特に何も買う気はないが、なんとなく二人並んでぶらついていると、周りはどこもかしこもクリスマス色に染まり、ジングルベルが流れている。


街の空気に飲まれた悠希は、音楽に合わせ鼻唄を歌い、あたしの顔を覗き込んだ。


「なぁ、本当になんか買ってダメ?」


「しつこい」


それでなくてもこの雰囲気に苛ついて帰りたいのに、逆なでするキーワードを言われ、苛つきはピークに達する寸前だ。


「俺、男だから彼女に何かしてあげたいって思うんだよ。歩、ゲーム欲しいって前言ってたじゃん。それ買ってやるよ」


「だ・か・らいらないってば!」


「お前が仕事行って待ってる間、俺ゲームできるじゃん。だから買おう。なっ!なっ!」


「ゲームなんてあんだろが!いらねったらいらね!」


「じゃ~薬指の指輪もいらねぇ?」


「クリスマスになんかいらね!」


「お前さぁ…」


悠希はなにかに理由を付けプレゼントを買いたがり、今にも喧嘩が始まりそうだ。


ギャーギャー人目もはばからず、言い合いをしていた時。


目の前に家族連れの男がこっちを見て止まった。


「おう、悠希!かなり久しぶり!」


感じのいい男は手をあげ近寄ってくるなり、あたしに軽く頭を下げ、悠希をからかいだす。


「彼女連れとは~いいじゃん」


「うるさいなぁ」


胸元に男の肩を何度か当てられ、悠希は顔を赤らめ照れている。


二人は楽しそうにしてこっちをチラッと見たが、たった今喧嘩しかけたあたしはそんな男にあいさつなんてしない。


別に、知り合いじゃねぇし。


あたしの頭にそういう文字が流れていたら、その友達の奥さんは旦那の隣でつられて笑っている。


細身で可愛らしく、年齢は似た感じだろう。


二人子供を連れていたが一人は赤ちゃんで、もう一人はやけに大きい。


久々に会った二人は興奮してあたしと奥さんそっちのけで夢中で話している。


久々だから仕方ないか…


あたしは悠希の隣に立ったまま二人の会話も聞かず、そこら辺に目を向けたり、携帯をいじり時間をつぶす。


知らない男の話しなんて聞きたくないし、興味すらわかない。


「彼女さん。待たせてごめんね」


「いや、別に」


会話が終わった男は愛想を振りまき、あたしに軽く謝ってくる。


悠希は不機嫌なあたしに気付き、うまく話を切り替えた。