結構な力で押さえ付けられているのか、はたまた酒で血行が良くなったのか、解放された友達の目元には薄らピンクの指跡が残っている。


その姿は突っ込みどころ満載だったがあえて触れず、周りの席が引いてしまうくらいあたし達はワァワァキャーキャー盛り上がった。


「アイツうけるよなぁ。この間なんてまたやらかしてよぉ」


「知ってる知ってる。あの客ツケしまくりで出入り禁止だって。バカ過ぎだろ」


「金ねぇなら家出んなっつのねぇ~」


「歩ちゃんきっつぅう~」


時間にしたら30分もない短時間。


その短い限られた時間をフルに使い、三人は楽しい時を過ごし、おいしい酒を飲んだ。


「歩ちゃ~ん」


ママ得意の嫌な呼び出しコールがカウンター方面から聞こえる。


内心この場を離れたくないけど、泣く泣くあたしは席を立ち、慶太さん達に敬礼して冗談まじりに挨拶をした。


「本当に楽しかったです!気合い入れて次のお客様を接客してまいります」


「俺必ず歩ちゃんにメールするから。次の客からガンガン金引っ張れよ~」


「あいよっ!」


笑顔で二人に手を振り、後ろ髪がひかれる思いを絶ちきり、ママのいるカウンターへとあたしは吸い込まれていく。


慶太さんに繋がるメモを大切にバッグへしまい、ニヤついた顔を押し殺し、気持ちを切り替え


金だよ金。戦闘開始じゃこら


自分にカツを入れ、再び夜の女へと変身を遂げ詐欺師の顔に戻ると、浴びるほど酒を飲み、記憶がないままその日。


一日の仕事を終わらせた。