“コントロールのきかない怒り”


まるで「歩」じゃないもう一人の「歩」が体内にいる感覚。


瞳を通して見えてる世界はここにあるのに、脳と心がリンクしていない。


誰?あなたは…


こんなに怒り狂ったのは、生きて来てそうそうない。


頭が真っ白な状態で自分が怖くなり、震えが止まらず、体に全く力が入らない。


西野君にやられてしまうんじゃないかという怖さと、自分のコントロールのきかない怒りがグチャグチャに交ざって、パニック状態だった。


「はっ。悠希に電話しなきゃ」


自分の中のブレーカーが落ちた瞬間。


涙が床にしたたり落ち、携帯のボタンをまともに押せず、小刻みに手が震える。


時計の針は夜中をさしていて、悠希は寝てる時間だ。


鳴らしているコール音が何度も耳入り、とてもとても長く感じる…


「んぁ。はいぃ…歩ぅ?どうしたぁ?」


この状況を知らない悠希の声は、たった今起きたばかりの寝ぼけ声。


「ひあっ、あっ」


涙声を必死でこらえればこらえるなり息があがりそうで、涙も止まらない。