仕事が無事に終わり、平日だった事もあり悠希は来ない日でとても寂しかったけれど、疲れが溜まっていたから客のアフターもせず真っ直ぐ部屋に帰り、ゆっくりしようとソファーに寝転んだ。


会いたいのに会えない夜は寂しくて寂しくて、心が折れてしまいそう。


悠希が恋しくて携帯を手に取り、メールをチェックしかけた。


その時


“トントン”


息つく暇もなくノックが鳴った。


「瑠衣かな？」


のぞき穴がない扉は開けない限り誰がいるかわからない。


この時間帯に来るのはどうせ友達だろうと思い、あたしは特別何も考えず扉を開けた。


「あ～ゆ～むちゃ～ん」


何処かで聞いた声に驚きつつ、扉を大きく開くと、さっきまで店にいた西野君が目の前に立ちはだかる。


「なんでここがわかるの！？」


驚きを隠せず声をあげたが、西野君はあたしの話も聞かずに横を素通りし、目も合わさず、部屋に上がり込んできた。


「ねぇ～上がらせてもらうよ。大事な話あるから」


「ちょっと！ここ男子禁制！ってか彼女と結婚決まったんでしょ！？裏切りはダメだって！」


西野君は婚約していて、これから一人の女を幸せにする義務のある男。


互いに大切な恋人がいるのだから絶対に部屋へ気安く上げるわけにはいかない。