それから数日後…


「あっ、悠希ドラマがなんたら言って予約してたな」


仕事が始まる前、あたしは独り言を呟きテレビをつけ、撮ってもらったドラマを見始めた。


最初は典型的な青春系で、あくびが出かかるつまらなさ。


「くっだらねえ~何が先生だっつうの」


ヘドが出そうな台詞に、口へ含んでたお茶をテレビにぶっかけてやりたい。


だが見るにつれ一つ一つのシーンに吸い込まれていき、心に突き刺さってくる。


本気でぶつかりあう生徒と生徒。


話しをして解決せず、暴力を振るい大乱闘の末、口から血を流してもかかっていく姿。


誰が悪?


誰が正解?


「なんでこんな思いしなきゃいけないの~」


気がつけばドラマに夢中になり、鼻水を垂らし大泣きしていた。


今までドラマを見て泣いた経験などなかったし、泣けなかった。


“ドラマってやっぱドラマなんだな。んなことあるわけねえよ”


以前のあたしなら途中でテレビを消していたのに…


夢中になっていたらいつの間にかドラマは見終わっていて砂嵐の画面。


情や思いやりを忘れ、人間らしさを捨てようとしていたから涙を流せる自分に驚いた。


悠希に逢ってからちょっとずつ変わっていく気持ち。


何をするわけでもないのに、隣に悠希がいるのはあたしにとって何よりも薬だったのかもしれない。