別に。放っといてよ。って、いつもの私なら言うだろう。だって、誰とも余計にかかわりたくないって思うから、いつもそうやって自分から相手を遠ざけていた。


でも今は。東和の言葉が頭の中で何度も繰り返し、響く。



〝葵も誰かを愛してみたらどうか〟



……そうだね。

恋人とか恋愛とかそういうのじゃなく、目の前にいる相手に、正面から向き合うこと。それも、その人を愛するということなんだと思う。


今すぐ友達になるとか、仲良くお喋りするとか、それは無理かもしれないけれど……



「……大丈夫。気にしてくれて、ありがとう」


人を愛したら生きることが楽しくなるって、東和が教えてくれたから。私はこれから、ゆっくりでもたくさんの人を愛していきたい。

両親から愛されなかった。それを理由に、誰のことも拒絶してきたけれどーー


もうそんなの、理由にならない。

だって東和が、私のことを好きになってくれたのだから。


頬に残る唇の感触、きっといつまでも忘れない。




さよなら、東和ーー。