好き、なんて。

今まで誰のことも突っぱねて生きてきた私に言ってくれたのは、じいちゃん以外だと東和が初めてかもしれない。


私だって……



東和と一緒にいたら、誰かを愛する気持ちが分かりそうな気がしていたんだよ。

東和のこと、愛せるかもしれないよ。



だから、行っちゃ嫌だよ。そう思うのに。




「じゃあな、葵」



東和はそう言って、私の頬に軽くキスをすると、空高く飛び、そのまま遠くへと姿を消していった。



「東和、東和……っ!」


私の声は彼には届かず、秋の風の音に吸い込まれて消えた。



いなくなってしまった。

もう、会えないの?


私の瞳から、涙が溢れる。



……こんな風に悲しくて泣くのは、何年振り? 思い出せない。涙の流し方なんて、忘れたと思っていた。