口づけ、って……昨日私が、東和にしたキスのこと、だよね?


「あやかしの口づけは、人間から生気を奪う」

「生、気?」

「お前の今日の体調不良は、昨日の口づけが原因だ。まあ、昨日のあれは一瞬だったし、恐らくあと数時間もすれば回復するだろう。……だが、姫は違った。俺はあやかしになったばかりで、口づけにそんな呪いのような効力があったなんて知らなかった。知らずにーーまだ子犬の姿だった俺は、姫に甘やかされ、大事にされ、口づけされた。そして結果、姫の生気を奪い取り、俺は姫を殺した」


言葉の一つ一つに込められた感情から、東和がそのお姫様のことをとても大切に……愛しく思っていたのだと伝わる。


その彼女の命を、寿命を、自分が縮めていたのだと初めて知った時、きっと東和は酷く傷付いたことだろう。


それはとても深い傷だったはず。
でも今、その心の傷を、私のために見せてくれている。


私のため……私を説得するため……私の命を守るため……。

東和の気持ちは伝わってくるし、有り難い。


だけど、私は……。



「お別れなんて、私は嫌だよ。それに昨日のキスは、東和が私にしたんじゃなくて、私から東和にしたんだよ。私、もう昨日みたいにあんたにキスしないよ。それならいいでしょ? 出て行く理由、ないでしょ?」


かっこ悪いくらいに自分の感情を次々に吐き出して、東和を引き止める。

かっこつけている間に東和がいなくなってしまうくらいなら、かっこ悪い方が断然良かった。


それでも、東和は。



「……駄目だ」

尚もその意思を変えない東和に「何で⁉︎」と食い下がる。


すると。