まるで子供扱いされているようなのに……東和の瞳はあまりに優しく、あまりに揺らがなかったからーー



トクンと胸が高鳴る。



しかし、その瞬間。


地上にいた化け物が、大きく跳ねーー大木の枝の上にいた私達の正面に姿を見せた。



「ひっ!」

恐怖で震える私とは対照的に、東和は化け物に対して余裕の笑みを浮かべる。


そして。



「葵。トラウマになりたくなければ目を瞑ってろ」


え? と聞き返しながら、隣に立つ東和を見上げると、東和の口元からは大きな牙が二本、生えている。

それは昨日、私の首元に宛てがわれた牙よりもずっと大きかった。



そして、枝から化け物の右肩へと飛び移ったかと思うとーー


その牙で化け物の首筋に噛み付き、ブチブチッという音を立て、その部位を食いちぎった。