「東和。あれは何なの?」

そう尋ねると、東和は化け物に視線を向けたまま、私の質問に答えてくれる。


「あれは青坊主だな」

「あおぼうず?」

「山のある土地には時々出没する化け物だ。幼子をさらったり、女を襲ったりする。俺と同じあやかしには違いないが、あれはほとんど自我がなく、本能的に人間を襲う。特に、葵のようにあやかしが見えるほど霊感の強い人間は、そういう奴らにとって大好物なんだ」

「そんな……どうすればいいの? そうだ、じいちゃんを呼んでくる⁉︎」


そう提案するも、東和は。


「そんなことしている間に、また襲われるのがオチだな」


そう言って、私の身体を枝の上にそっとおろす。
その枝の上に腰をおろし、幹にしがみついてバランスを取った。


「ちょっと高さはあるが、地面にいるよりは安全だろ」

「……どうする気?」

「俺が退治する」

「無理だよ!」


だって、東和とあの化け物とじゃ、身体の大きさが全然違う。挑んだりしたら、東和があいつに殺されてしまう。