ーーいつ死んだっていいと思ってた。

でもそれは本音じゃなかったんだって、東和に気付かされた。


その東和も、どこかにいなくなってしまったけれど……


それでも私は……


東和を見つけたい。



私はまだ……




「ーー死にたくないっ!」



全力で叫ぶと、目の前をヒュッと風が通り過ぎた。


次の瞬間。
強い力で掴まれていたはずの腕は解放されており、そして私の両足は空中に浮いていた。



「大丈夫か、葵」



私は、東和に姫抱きされた状態で、顔を覗き込まれる。



「何で……?」


何で、ここにいるの?
私といてもつまらないから、ううん、私のことが嫌になって、出て行ったんじゃなかったの?



だけど目の前の東和は、まるで安心したかのように優しく微笑んでいる。



状況が飲み込めない。


だけど、東和が助けてくれた。
それだけは紛れもない事実だった。



紅葉の大木の太い枝の上に、私を抱えたまま両足で立った東和は、今度は怖い顔をして、地上にいる化け物を見つめる。