どういう訳だか、うちの神社の鳥居にはこういったあやかしが集まりやすい。
そのため、人間に害を及ぼす可能性がありそうな危険なあやかしが存在していないか、帰りがけに毎日確認するよう、じいちゃんから言われている。

そんなあやかしは、十七年間の今までの人生でとりあえずは見たことがない。
発見したところで、じいちゃんに報告する前に襲われてしまいそうな気もする。
私は、あやかしの姿は見えるけれど、じいちゃんと違ってそれを退治する力はないからだ。


危険なあやかしに遭遇し、餌となり、死ぬ。

そうなったら、私も成仏出来ずにこの辺りを彷徨うのだろうか?



……いや、私だったら〝死んでラッキー〟とか思って、あっさりあの世に行くかも。

あの世の方が楽しければ、それこそラッキーだ。


……そんなことを考えてながら辺りをパトロールしていた、その時だった。



「……えっ?」



人が倒れていた。

いや、人間じゃない。
人間の男に近い姿をしているけれど、これはあやかしだ。〝気〟で分かる。


それによく見ると、こいつの黒髪からは犬のような黒い耳、お尻からは同じく黒い尻尾が生えている。


身長は百七十……いや、百八十センチはありそうで、なかなかでかい。

黒のTシャツに、紺のジーンズ……足は裸足だが、人間と何ら変わらない服装を見に纏っている。


もしかして、これはじいちゃんが言っていた、人間に害を及ぼすあやかし?


倒れているし、今のうちにじいちゃんを呼んでこようか。


そう考えながらゆっくりと後退りをした、その時。


「う……」

あやかしが、目を覚ましたのかゆっくりと起き上がる。

そして、上半身を起こしたそいつは、自分の今いる居場所を確認するかのように辺りを見渡し……そして、視界に私の姿を捉えた。