東和は無表情のまま、その場で軽く飛び跳ねる。
この間、私を抱えて拝殿の屋根まで上った時と同じように高く飛ぶと、軽やかに鳥居の上に立った。


「じゃあな、葵」

「っ、ちょっと待って!」


ほとんど無意識に引き止めた。


さっさと出て行け、って何度も思っていたはずなのに。


今は、行ってほしくなんかない。



どうして急に、いなくなるの? どうして急に、冷たくなるの?



そんなに、私にキスされたのが嫌だった?




届くはずはないのに、鳥居のてっぺんに向かって手を伸ばす。


しかし、サアッと強い風が吹き、落ち葉が舞い、反射的に目を閉じた。

その目を開けた時にはもう、視界のどこにも東和の姿はなかった。



「東和……?」