結局、東和とはあれからほとんど口を利かないまま翌朝になった。


私の方も何となく東和のことを避けてはいたものの、東和はそれ以上に私に近付こうとしてこなかった。


いつもは、ご飯おかわり、ってうるさいくらいに言ってくるのに、それもなかった。



……急にキスしたこと、そんなに怒ってるの?



だって、誰かを愛してみろって、東和が言ったんじゃん。
誰のことも好きになれない私でも、東和に対してなら、そう思えるかもって思った。もちろん、恋なんかじゃないけれど。
あのキスだって、ペットにキスするのと同じ感覚だった。


それなのに。あやかしのくせに。千年も存在してるくせに。


キスくらいでそんなよそよそしい態度にならないでよ。



……こんな気持ちになるくらいなら、恋愛なんかしたくない。



私は今日、東和がこの家にやって来てから初めて、東和からの〝いってらっしゃい〟を聞かずに登校した。