その高さに一瞬だけ腰が引けそうになるも、すぐに目の前の景色に心奪われる。

アルプスに沈む夕日が、山々を赤く染め上げている。
市内の街並みは勿論、市から町まで跨る高原までをも一望出来る。


綺麗……と素直に思った。



「こんな景色、初めて見ただろ?」

隣に立つ、身長の高い東和の顔を見上げればムカつくほどにドヤ顔をしていて、悔しくなる。


「あ、当たり前でしょ。屋根の上に登ることなんてないもの。ていうか、拝殿の屋根に上がるなんて罰当たりでしょ! 早く降ろして!」

「うーん、そいつは出来ない相談だな」

「何でよ」

「今、葵の笑顔を初めて見たからだ」