「えーと、橘さんだっけ? 本当に暴力を振るったの?」

「……」

「……とりあえず大きな怪我はないみたいだし、今日はこれ以上は大ごとにしないようにしよう。橘さん、次に同じことをやったら、ご両親を呼ぶからね」

教師はそう言って、納得したような顔でその場から去っていく。


残された女子三人組は、教師の姿が見えなくなってからクスクスと面白おかしそうに笑う。


「先生、完全にうちらのことだけ信じてたね」

「ていうか、両親呼ぶってさ」

「呼んだって来ないのにね。ねえ、橘さん?」


……バカバカしい。
これ以上こいつらとかかわっていても、時間の無駄だ。

三人組の、気分の悪い笑い声を背中に受けながら、私は教室へと戻った。




『ていうか、両親呼ぶってさ』

『呼んだって来ないのにね』



……だったら何だって言うの。


どいつもこいつも、面倒臭い。