さて、ついに旅行です。車に乗り込む前、
「どうして旅行に行くことにしたのですか?」
と旦那様に尋ねると、旦那様は
「新婚旅行だよ?」
と答えてくれた。
それを聞いた途端、恥ずかしくて顔から火が出そうでした…!

「今回はどちらに向かうのでしょう?」
車での移動中、運転手はいるものの旦那様と二人横に並んで話題がないと言うのは気まずくて…何か話題はないかと思い、とりあえず話しかけてみたのだ。
「そうだな。人間の世界ではないな。」
え、異世界にでも連れて行かれるの?
「今回行くのは、妖怪の国だ。」
旦那様は懐かしそうな顔をして笑った。実際、懐かしいのだろう。
「旦那様のご実家に行くのでしょうか?」
にっこり笑いながらそう尋ねると、
「いや、新婚旅行にそんなところには連れて行かないさ。それに…。」
旦那様がその続きを話されることはなかった。一度、お義父様やお義母様にお会いしてみたいものだが、どちらにいらっしゃるのだろうか?

「起きて。ついたよ。」
旦那様の声に優しく起こされる。どうやら私は眠ってしまっていたらしい。それも、旦那様の肩を借りて。
「も、申し訳ありません…!」
頭を下げて謝ると、旦那様はニコニコして
「いいよ。夫婦なんだから。」
と言った。
旦那様が車から降りられて、私も降りようとすると、旦那様は
「はい。」
と手を差し伸べてくれた。旦那様の顔は少し赤かった。恥ずかしいのならなさらなくてもいいのに。そんなことを思いながら、でも、それが心底嬉しかった。