「ああ、バレちゃったね…。」
私は驚きを隠せず、膝から崩れ落ちてしまった。
「ど、どういうことですか?旦那様…。」
「そうだね。帰ってから説明しようか。」
ちょっと待ってて。旦那様はそう言って腰を抜かした私を隣の部屋に運んだ。
それから、1時間くらいしただろうか?その間、ずっと旦那様の怒鳴る声が聞こえていた。父はひたすら謝っていたようだ。
『私は旦那様に愛されている』
おろかにも、私はそう感じた。私が誰かに愛されるわけないし、ましてや初対面の方だ。私を愛しているはずがない。きっと、同情してくださっているんだ。可哀想な私に…。
「ごめん、終わったよ。」
ひょこっと隣の部屋を覗くと、父が泣き崩れていた。あんなに情けない父の姿を見たのは初めてだ。
私はそんな父の姿に驚きながら、旦那様が差し出した手をとった。


山に帰ると、旦那様は正座をして私と向き合うように触った。
「どこから話せばいいのか…。」
旦那様は少し申し訳なさそうだ。
「怒りませんから、ゆっくり話してください。」
私がそういうと、旦那様は驚いた顔をして私を見た。そして、にっこりと笑って
「優しいんだね。」
と言った。それから、旦那様は常人には予想もつかない真実を、私に話してくれた。
「九尾なんだ、俺。」
旦那様は苦笑いをしながらそう話してくれた。そして、
「それでね、君の家の守護神なんだ。」
と付け加えた。
「そうですか。」
私はもう驚かなかった。あの尻尾と父の態度を見た時から想像はできていた。そっか。私は、生贄みたいなもんだったのか。なんとなく、納得がいった。
「で、でも!」
旦那様は少し顔を赤らめて続けた。
「大事にするから!もし、俺が九尾でもいいっていってくれるなら、大事にするから!」
『大事にする』?信じられない一言だった。でも、旦那様のいうことなら信じてみてもいいのかもしれない。
私は、にっこり笑って言った。
「ありがとうございます。旦那様。」
その目には、涙が浮かんでいた。