2時間ほどかけてついたのは、私が住んでいた父の屋敷だった。普段、歩き慣れていない私は、途中でくたびれてしまって、旦那様が抱えてくれた。ものすごく恥ずかしかったけれど、表情には出ていないだろうさ、バレないのならとそのまま黙っていた。
屋敷につくなり、旦那様は大きな声で叫んだ。
「屋敷の主人はいるか!?」
と。
父のことを呼んでいるのだ。父は使用人に呼ばれて慌てて出てきた。娘を返品されたのかと慌てているのだろう。
「何か娘に問題でもありましたか?」
父が敬語を使っているのは初めて見た。そのくらい偉い人なのだろうか?旦那様は。
「お前の育て方には問題があるようだ。」
旦那様が怒ったようにいう。
それに対し、父は申し訳なさそうに言った。
「厳しく叱っておきますので、どうかお許しください…。」
父は旦那様に頭を下げようとした。けれど、旦那様はそれをさえぎった。
「違う!俺が怒っているのはお前に対してだ!」
いきなり叫ぶ旦那様に、父は怯えてい……あれ?
「だ、旦那様…?」
「ああ、すまない。驚いたかい?」
私の頭を優しく撫でる旦那様。でも、私は一歩後ずさった。
「ど、どうしたんだい?」
「だ、だって、し、尻尾…。」
旦那様には、九本の尻尾と獣のような耳が生えていた。