「強制的に嫁にして、惟子の意思など全く無視をしてつれさった俺が惟子のそばにいていいのか。そんな風に思うようになった」

「そんなの言ってもらわなきわからないわよ」
キュッとサトリの着物をキュッと握りしめると、惟子はサトリの胸に頭を埋めた。

「しかしなんとかこの２年黒蓮の暴走をとめようとしていたが、時期に西都から誘拐が発生していると報告があった。そんな中お絹までいなくなった。そして惟子の場所も見つかるのも時間の問題だった。もう限界だったが、俺はなんとかあの〝下”の結界を解こうといて直接黒蓮を倒すのを諦めていなかった」

ずっと、海をみつめ何かを考えるようにしていたサトリの真実が解り、惟子もギュッと胸が締め付けられた。

「ずっと……天弧は惟子の力を借りよう、そう俺に言っていたんだ。しかし俺がずっと躊躇していいた。長として失格だな。こんな私情を挟んで」
自嘲気味な笑みを浮かべなたサトリにをジッと惟子は見つめた。


「天弧は……お絹までいなくなったことで、俺に背く覚悟で惟子をつれてきたのだろう。あの二人は仲がよかったから。天弧を責めないでやってくれ」
小さく頭を下げたサトリに、惟子はおもいきり頭を振った。

「違う、違うのよ。私がてんちゃんに連れて行ってとお願いしたの。ダメだというてんちゃんを説得したのは私よ」

「え……？どうしてそんな危険なことを！」
顔色の変わったサトリに、惟子は真面目な表情を向けた。

「わからない？」

「わかるわけないだろ」
少しの時間二人は視線を外さずお互いの瞳の揺らめきを見ていた。

「私も同じ。誰よりも大切な旦那様を助けたい。そう思ったから」
「惟子……」

その言葉と同時にものすごい力で惟子は抱きしめられた。


「惟子のことが何よりも、大切だ。守りたい。真の夫婦になりない」

「よろしくお願いいたします。私の旦那様」
うれし涙が流れる惟子の涙を拭うと、サトリはもう一度惟子を抱きしめた。

「ずっと守る。だから惟子これからも俺のそばにいてくれ」
惟子は小さく頷いた。

しばらく抱き合っていると、惟子のお腹が「グー」と音を立てた。
「いやだ」
「惟子、食事にしよう」
クスクスと笑うサトリを見て、惟子も満面の笑みを浮かべた。


簡単に白米とお味噌汁、少し漬かりすぎた漬物を食べながら惟子はふと疑問を口にした。

「ねえサトリさん、「光明のお嫁様」の話をしたのは誰？」

「え？」
その問いにサトリは食べる手を止めた。

「黒蓮ではないわよね？　それに……黒蓮は我を失っていたわ」

「あの時……その話をしたのは……」

そこでハッとしたようにサトリは惟子を見た。


「一颯」

（まだ何も解決していないのかもしれない）

惟子はまだ止まない雨に視線を移した。

嫁としてようやくスタートラインに立ったにすぎない。
それでも覚李の〝お嫁様”として一緒に生きて行く。
その覚悟を胸にすると、惟子は隣のサトリの手に自分の手を重ねた。

力強く握り返されたこの温もりを離さない。
そう惟子は心に決めた。


そしてひと時の幸せを惟子はかみしめ微笑んだ。