え……？
どうして？
惟子は扉を後ろ手で閉めると呆然と立ち尽くした。
そこは見覚えがある場所だった。
「うそ……」
声が今までとは違って聞こえたような気がした。
静まり返っていて真っ暗だったが、その雰囲気、香りは惟子が慣れ親しんだ場所であり、つい数日まえまで過ごしていた場所だった。
こんなにあっさりとこの場所につながったことに驚きを隠せなかったし、今の状況が信じられなかった。
惟子はバタバタと音を立ててテラスへと出た。
外を見れば真っ暗で雨がしとしとと降り、海は恐ろしい程静かだった。
しかし、まぎれもなくここは現世であり、惟子のカフェだ。
さっきまでカクリヨにいたはずで、一颯と対峙し冷や汗を流していたのは、着ている着物を見ても疑いようがない。
あの扉を通ったらここへとつながった……？
そう思うしかないだろう。
あの時、ずっと昔黒蓮もあそこから来たのだろうか？
惟子はなんとか自分を落ち着かせると、ギュッと唇を噛んだ。
現世に戻ってきたことは何か意味があるのだろうか？
ギュッと首からぶら下げてあるサトリからもらった石と、指輪を取り出して握りしめる。
なに！？
その時真っ暗だった部屋に、一筋の黄色い光が廊下の一か所を照らしたのがわかった。
ひきよせられるようにそこへと向かうと、そこはただの真っ白な壁だった。
しかし、石をどんなに移動させても光はその場を指しているように見えた。
そっとそこへと手をかざすと、花のような真っ赤な文字のようなものが浮かび上がる。
〝光を纏いしとき 朱紫ｱｹﾑﾗｻｷの光 闇とともに現る”
なに？これ……？
日本語ではない文字だが読めたことに驚きつつも、意味がわからない言葉を惟子はジッとみつめた。
跡継ぎ問題で揺れる黒蓮とサトリの争いからサトリを助け出したい一心だったが、どうやらそれだけでは全くすまなくなってきた気がしていた。
自分自身の身に起こることも、今まであってきたあやかし達のことも、すべてがあの〝下”に隠されている。
惟子はそんな気がして仕方がなかった。
「光を纏いしとき赤き光？ 光を纏うと、赤い光？ 光なのに闇？」
言葉に出してみても全く分からなかったが、今この場にとどまって入れもどうにもならない。
それだけは確かだろう。
「この扉をあけたら今度はどこにいくのかしら……」
無意識に不安から言葉が零れ落ちる。
どれぐらいその場にいたのだろうか？
焦る気持ち、恐怖、不安、すべてが入り混じる。
しかし、ここまで来た以上いまさらなかったことにしてこの場にいる訳にもいかないだろう。
ここにだって危険が迫っていたのは確かなのだから。
『惟子』
サトリの言葉が聞こえた気がして、惟子はもう一度あの扉・・・に手をかけた。
何度目の驚きだろう？
嫌、驚いた場所ではなかったのかもしれない。
今度扉を開ければ、どこかとんでもない所へと出るかもしれない。
そう覚悟して扉を開けた惟子だったが、予想に反して普通の部屋だった。
それは先ほどの扉を開けた先の部屋なのだろう。
赤い壁に囲まれた６畳ほどで、本棚やテーブルなど今までに見た華美なものではなく、惟子の部屋にあったような普通の家具が置かれた部屋だった。
惟子はゆっくりと足を踏み入れると、部屋を見回した。
特に変わった場所も見受けられず、奥には大きくない窓があり外が見えた。
やはり高い場所にあるようで、下には木々が生い茂る山のように見えた。
（あれ？）
何かが木々の間で動いたような気がして目を凝らした。
（何かが引きずられている……？）
そう思った瞬間、頭に霞がかかるように惟子は意識を失った。
どうして？
惟子は扉を後ろ手で閉めると呆然と立ち尽くした。
そこは見覚えがある場所だった。
「うそ……」
声が今までとは違って聞こえたような気がした。
静まり返っていて真っ暗だったが、その雰囲気、香りは惟子が慣れ親しんだ場所であり、つい数日まえまで過ごしていた場所だった。
こんなにあっさりとこの場所につながったことに驚きを隠せなかったし、今の状況が信じられなかった。
惟子はバタバタと音を立ててテラスへと出た。
外を見れば真っ暗で雨がしとしとと降り、海は恐ろしい程静かだった。
しかし、まぎれもなくここは現世であり、惟子のカフェだ。
さっきまでカクリヨにいたはずで、一颯と対峙し冷や汗を流していたのは、着ている着物を見ても疑いようがない。
あの扉を通ったらここへとつながった……？
そう思うしかないだろう。
あの時、ずっと昔黒蓮もあそこから来たのだろうか？
惟子はなんとか自分を落ち着かせると、ギュッと唇を噛んだ。
現世に戻ってきたことは何か意味があるのだろうか？
ギュッと首からぶら下げてあるサトリからもらった石と、指輪を取り出して握りしめる。
なに！？
その時真っ暗だった部屋に、一筋の黄色い光が廊下の一か所を照らしたのがわかった。
ひきよせられるようにそこへと向かうと、そこはただの真っ白な壁だった。
しかし、石をどんなに移動させても光はその場を指しているように見えた。
そっとそこへと手をかざすと、花のような真っ赤な文字のようなものが浮かび上がる。
〝光を纏いしとき 朱紫ｱｹﾑﾗｻｷの光 闇とともに現る”
なに？これ……？
日本語ではない文字だが読めたことに驚きつつも、意味がわからない言葉を惟子はジッとみつめた。
跡継ぎ問題で揺れる黒蓮とサトリの争いからサトリを助け出したい一心だったが、どうやらそれだけでは全くすまなくなってきた気がしていた。
自分自身の身に起こることも、今まであってきたあやかし達のことも、すべてがあの〝下”に隠されている。
惟子はそんな気がして仕方がなかった。
「光を纏いしとき赤き光？ 光を纏うと、赤い光？ 光なのに闇？」
言葉に出してみても全く分からなかったが、今この場にとどまって入れもどうにもならない。
それだけは確かだろう。
「この扉をあけたら今度はどこにいくのかしら……」
無意識に不安から言葉が零れ落ちる。
どれぐらいその場にいたのだろうか？
焦る気持ち、恐怖、不安、すべてが入り混じる。
しかし、ここまで来た以上いまさらなかったことにしてこの場にいる訳にもいかないだろう。
ここにだって危険が迫っていたのは確かなのだから。
『惟子』
サトリの言葉が聞こえた気がして、惟子はもう一度あの扉・・・に手をかけた。
何度目の驚きだろう？
嫌、驚いた場所ではなかったのかもしれない。
今度扉を開ければ、どこかとんでもない所へと出るかもしれない。
そう覚悟して扉を開けた惟子だったが、予想に反して普通の部屋だった。
それは先ほどの扉を開けた先の部屋なのだろう。
赤い壁に囲まれた６畳ほどで、本棚やテーブルなど今までに見た華美なものではなく、惟子の部屋にあったような普通の家具が置かれた部屋だった。
惟子はゆっくりと足を踏み入れると、部屋を見回した。
特に変わった場所も見受けられず、奥には大きくない窓があり外が見えた。
やはり高い場所にあるようで、下には木々が生い茂る山のように見えた。
（あれ？）
何かが木々の間で動いたような気がして目を凝らした。
（何かが引きずられている……？）
そう思った瞬間、頭に霞がかかるように惟子は意識を失った。
