着替え終わり、惟子が厨房へと戻るとなにやらスタッフたちが集まっていた。
「料理長、私は何をすれば? 本当にお皿でもなんでも洗うけど」
新人な上に、潜入している身としてはあまり目立つこともしたくなくて、惟子は集まっている中の中心にいた料理長に声を掛けた。
「お絹、何をいってるんだ?」
(先ほども「ありがとう」と言われたし、料理長は私をどう思っているのかしら?)
そう思いながら、料理長の言葉を待つと手招きをされる。
言われるがままに、近づくとそこにはまたもや魚があった。
「そういうこと!」
納得ができて惟子はポンと手を叩いた。
「前いた魚の担当がいなくなっちまったんだよ。ほとほと困っていたところだったんだ。お絹は救世主だよ」
めずらしく長く饒舌に話したと思えば、またもや料理長は目頭を腕で抑えると涙を流した。
そんな料理長が可愛らしくて、惟子は腕まくりをすると気合を入れた。
「じゃあ、さっそくこの魚を捌けばいいのかしら。えっとサバね」
「そうだ」
またもや短く答えた料理長に、惟子はサバを見ながらメニューを考える。
「今日はどなたが召し上がるの?」
「今日は昼食を兼ねた打ち合わせがある。上級あやかしの皆様が20名ほどと聞いている」
(20名か……)
結構な人数の為、いちいち焼いたり刺身に捌いたりするのは大変そうだ。
「そのほかのお料理は?」
もちろん魚だけではないだろう。これだけの人数であくせく働くあやかし達に目を向けた。
「弥勒様からは、お任せすると言っていただいているが」
弥勒の名前がでて、惟子は料理長の顔をみた。
「弥勒様も出席されるの?」
上級あやかしの中でも、下の方だと思っていた惟子としては、黒蓮と一緒に昼食をする身分なのか気になった。
「ああ、まあ書記としてだろうな。こういった手配はすべてされている」
上級あやかしの雑用係といったところなのだろうか、惟子は妙に納得した気分になった。
「そうなのね。それでお料理はどうするの?」
「洋食にしようと思っていたのだが、魚もできるか?」
確かにサバと言えば和食のイメージが強いだろう。煮魚、焼き魚、揚げ物。どれも美味しい。
しかし洋食となればまた違う。
「大丈夫よ。私はなんて言ったってカフェ」
そこまで言って惟子は慌てて言葉を止めた。
「カフ?」
聞いたことのない単語だったのだろう、料理長は不思議そうな顔をして惟子をみた。
「いいえ、なんでもないの。洋食も得意ということよ」
ごまかすようににこにこと笑いながら惟子が言うと、料理長は嬉しそうに「そうか」と言った。
「じゃあ、そうね。さっきそこに美味しそうなトマトがあったから……サバとトマトを合わせてみるわ」
惟子の言葉に、料理長は「頼む」というと自分の持ち場に戻っていった。
「料理長、私は何をすれば? 本当にお皿でもなんでも洗うけど」
新人な上に、潜入している身としてはあまり目立つこともしたくなくて、惟子は集まっている中の中心にいた料理長に声を掛けた。
「お絹、何をいってるんだ?」
(先ほども「ありがとう」と言われたし、料理長は私をどう思っているのかしら?)
そう思いながら、料理長の言葉を待つと手招きをされる。
言われるがままに、近づくとそこにはまたもや魚があった。
「そういうこと!」
納得ができて惟子はポンと手を叩いた。
「前いた魚の担当がいなくなっちまったんだよ。ほとほと困っていたところだったんだ。お絹は救世主だよ」
めずらしく長く饒舌に話したと思えば、またもや料理長は目頭を腕で抑えると涙を流した。
そんな料理長が可愛らしくて、惟子は腕まくりをすると気合を入れた。
「じゃあ、さっそくこの魚を捌けばいいのかしら。えっとサバね」
「そうだ」
またもや短く答えた料理長に、惟子はサバを見ながらメニューを考える。
「今日はどなたが召し上がるの?」
「今日は昼食を兼ねた打ち合わせがある。上級あやかしの皆様が20名ほどと聞いている」
(20名か……)
結構な人数の為、いちいち焼いたり刺身に捌いたりするのは大変そうだ。
「そのほかのお料理は?」
もちろん魚だけではないだろう。これだけの人数であくせく働くあやかし達に目を向けた。
「弥勒様からは、お任せすると言っていただいているが」
弥勒の名前がでて、惟子は料理長の顔をみた。
「弥勒様も出席されるの?」
上級あやかしの中でも、下の方だと思っていた惟子としては、黒蓮と一緒に昼食をする身分なのか気になった。
「ああ、まあ書記としてだろうな。こういった手配はすべてされている」
上級あやかしの雑用係といったところなのだろうか、惟子は妙に納得した気分になった。
「そうなのね。それでお料理はどうするの?」
「洋食にしようと思っていたのだが、魚もできるか?」
確かにサバと言えば和食のイメージが強いだろう。煮魚、焼き魚、揚げ物。どれも美味しい。
しかし洋食となればまた違う。
「大丈夫よ。私はなんて言ったってカフェ」
そこまで言って惟子は慌てて言葉を止めた。
「カフ?」
聞いたことのない単語だったのだろう、料理長は不思議そうな顔をして惟子をみた。
「いいえ、なんでもないの。洋食も得意ということよ」
ごまかすようににこにこと笑いながら惟子が言うと、料理長は嬉しそうに「そうか」と言った。
「じゃあ、そうね。さっきそこに美味しそうなトマトがあったから……サバとトマトを合わせてみるわ」
惟子の言葉に、料理長は「頼む」というと自分の持ち場に戻っていった。