「なんだ、お絹。お前は仕事がないのか。ちょうどよい仕事を見つけてやろう」
そう言うと、弥勒はそばにいた部下に、何かを言うとにこやかに笑った。

「弥勒様、そのお仕事はどこで?」
不安になりつつ声を掛けた惟子だったが、もしかしたら妖王や、黒蓮の近くにいけるかもしれない。
そう思うと、ごくりと喉がなる。

「悪いようにはしない。明朝6時にあの赤い桟橋まで来い。仕事を紹介しよう」

一体どんな仕事が待っているかわからなかったが、唯子としてはなんの手掛かりもな、知り合いも、どうすることもできない今、この流れに身をまかせることに決めた。

ガマ蛙に感謝されつつ、惟子はお屋敷へとそっと帰った。
「来てすぐに、ここからサヨナラなんてね」
誰もいない部屋でつぶやくと、小さくため息つく。
天はいったいどこにいってしまったのか。そんなことを思うと、どんどん気持ちが沈んで行ってしまう。

今日1日で色々なことがありすぎた。惟子はそう思うも、明日からさらに危険な場所へと向かうことになる。
そう思うと、押し入れから布団を拝借すると、目をギュッと閉じた。

酔っ払いの戯言かもしれないが、行ってみる価値はある。
そう自分に言い聞かせると、惟子はゆっくりと深い眠りについた。