「ゆいちゃん、隔世にも現世と同じように、宿もあれば店もあるのはわかるよね?」

惟子はいきなり話が違う方へと向かった気がしたが、せっかくてんが話てくれているんだからと、黙って頷いた。

「だから、もちろん偉い人もいる訳で」
それはそうだろう。惟子はもっともな話にてんをみた。
「だから?」
「そう、いいあやかしも悪いあやかしも、そしてお家騒動なんかも普通にあるんだよ」
そこでてんは小さくため息を付いた。

「サトリ様はいわゆる、隠しあやかしのようなもので……」
言葉を濁したてんに惟子は、言葉の意味がわからず顔を歪めた。

「隠しあやかし?」
「そう、妖王には正当な後継者である……」

(え?今なんていった?)

「てんちゃん、ちょっと待って? え? 待って?」
聞きなれない言葉だったが、なんとなく意味がわかった惟子はジッとてんを見た。
「妖王って言った?」
「言ったよ。隠世にも王はもちろんいるに決まってるでしょ?」
少し呆れたようなてんの言葉は惟子はほとんど聞いていなかった。

(サトリさんが妖王の隠しあやかし?)

てっきり惟子としては、サトリはどこかの親分みたいなもので、惟子に8年前にしたような悪いあやかしを取り締まっているような仕事だと思っていた。

例えて言うならば、こちらたの世界の警察のようなものを想像していた。だからあの服は制服で着ていると仕事の日、そんなことを思っていた。