「やっぱり、サトリさん何かに巻き込まれてるの?」
静かに言った惟子の言葉にてんは諦めたように頷いた。

「ねえゆいちゃん、サトリ様が何者かわかってる?」
その言葉に、惟子は動きを止めた。
何者かと聞かれれば、あやかし、きっとたぶん少し身分は上の人だろう。惟子はそれぐらいだと思っている。

「聞いたけど教えてくれなかったから……」
キュッと唇を結んで惟子は答えると、チラリとてんを見た。

「サトリ様、隠していたからね。いつまでも隠し通せるわけないのに。よくこの2年持ったよ」
ため息交じりに言ったてんの言葉に、惟子は驚いて目を見開いた。

「持ったってどういうことよ?」

「きっと、僕後ですごく怒られるんだろうな。サトリ様怒ると怖いんだよな……でも、もう限界かな……」
てんはまだ覚悟が決まらないようで、ブツブツと呟いていた。

「てんちゃん! 私もサトリさんを助けたいの!」
惟子の言葉に、てんは大きくため息を付いた。

「ゆいちゃんは特別(・・)なんだよ」
特別、その言葉を遠い昔もどこかで聞いたような気がして、惟子はてんをジッと見た。
「このサトリさんを浄化できる力のこと?」

「それもそうだね。だから……」
そこまで言うと、てんはまた言うのを躊躇する。その態度に惟子はてんを睨みつけた。

「ねえ、どんな現実でも受け入れるから、だから教えて! 私にも関係してることなんでしょ?」
泣きそうになりながら、惟子は懇願する。もうこれ以上サトリに何が起きているのかわからないのも、今のままいることも耐えられそうにない。

初めのような、とりあえずこの〝契約”が問題なく過ぎればいいと思っていたころとは、惟子自身気持ちが違った。

サトリは惟子にとってかけがえのない人になっていたのだから。