#あやかし飯 2 〝時短!少しだけおめかしじゃがいものあやかしカレー丼”

そんな事を思いながら、惟子ジャガイモを食べやすい大きさ、玉ねぎをみじん切りにする。
それらと、ひき肉、水、カレールー、砂糖を耐熱容器に入れた。
惟子が食べるときは砂糖は入れないが、あやかしはどちらかというと、甘めの味付けが好きなことをこの2年で学んだ。

「そうしたら、レンジでチン」

惟子の声に合わせて、てんたちも嬉しそうに「チン!」と声を上げる。
クスクスと笑いながら、手早く惟子はフライパンにオリーブオイルをひいて目玉焼きを作っておく。

「目玉焼き」
まるで歌のように歌いながら、くるくると店の中を回るあやかし達に惟子はたくさんの家族の中にいるような気分になる。
これを作った日は、祖母が亡くなり、両親も遠く、一人でこの地にきて孤独で寂しくて泣いていた自分が、遠い昔のような気がした。

チン

電子レンジの加熱終了の合図に、惟子はお皿にご飯を乗せ、加熱したカレーを乗せる。

「最後に、目玉焼きとドライトマトを飾って出来上がり。お好みでチーズも美味しいよ。はい、あやかし専用じゃがいものカレー丼」

「えートマト?」
てんの不服そうな声は聞こえないふりをして、惟子は美味しそうに出来上がった丼を机に並べた。

「サトリさんはそっちで食べる?」
「そうしてくれ」
少しだけ微笑んだサトリにホッとしつつ、惟子はサトリの上にはトマトをたくさん乗せたものを運んだ。

「ありがとう」
「どういたしまして」
ニコリと笑う惟子に、サトリも笑みを浮かべた。

「ゆいちゃん、おいしいおいしい」
嬉しそうに食べるてんたちのほうへと行くと、惟子はてんの皿に目を向ける。

「てんちゃん、どうして隅っこにトマトがあるの?」
てんの頭を撫でながら、惟子は顔を覗き込む。
「最後に、最後に食べようと思っていたんだもん」
子供みたいな言い訳に惟子は啞然とする。