家に帰って来たのは
いいのだけれども
誰一人として喋ろうとしない。

茜と二人なら色々喋っただろうけど
母さんと父さんがいるから
何を喋ったらいいのか……

リビングは沈黙に包まれている。

私達の能力(ちから)のことを
さっきまで知らなかった両親は
さぞ、驚いただろう。

死神や天使と
当たり前に話をしていたんだから。

両親にしてみれば
“普通”じゃないのは確かだけど
私達にとっては“普通”のこと。

そして、大切な人達。

「何で今まで黙っていたの?」

小さな声で母さんが訊いて来た。

最初に口を開いたのは母さん。

何で?

さっき、父さんが
“何故、死神と普通に話している?”
と訊いてきた時と同じだ。

『言ったらそのことを
すんなり受け入れてくれたわけ?』

そんなこと無理に決まっている。

さっきの反応でわかっていた。

あれは、怯えた目だ。

人は自分の中ある常識を越える
何かに遭遇した時、それを
排除しようとする傾向にある。

『無理でしょう?』

つまり、私達と母さん達では
そもそもの“常識”が違う。

私は一人でずっと喋っている。

母さん達は口を開こうとしない。

わかっていたことだ。

『茜、部屋に行くよ』

何も言わない二人を置いて
茜とリビングを出て部屋に戻った。

結局は、自分の中ある“常識”でしか
人は物事を計れない。

別に理解してもらおうなんて
最初から思っていないけど。