「……よく子供っぽいって言われる」
「ええんちゃう? 見てて飽きんわ」
「それ、褒められてるの?」

 榊原は目を細め、やわらかい声で言った。

「あぁ、なんやかわいく見えてきたわ。俺、お前のそういうところ、わりと好きやで」

 率直な言葉でそう言われ、頬が熱くなった。
 何だろう。榊原といると、今まで抱いたことがない感情が、次々に溢れてくる気がする。

「あとな、お前は絶対俺みたいにはなれへん」
「確かに、そうかもしれないけど、そんなハッキリ言わなくても……」

 落ち込んでいると、違う違う、と榊原が笑った。

「俺みたいになる必要なんかないって話や。お前には、お前のいいところがあるやろ? 
俺はどう頑張っても、志波みたいに自分の思ったこと素直に表に出して、全部伝えるなんて絶対できへん。
けど、だからこそお前みたいなやつに救われる人間もおるってことや」
「俺が、救う?」

 本当にそんなこと、できるだろうか? 考えていると、榊原は俺の肩を叩いた。

「言っとくけど、俺は人使い荒いで?」
「知ってるし、いいよ、それでも!」

 働いていた会社が潰れた時は、まさか自分が陰陽師の手伝いをするなんて、想像もしていなかった。
 でも榊原の近くにいれば、今までより楽しい毎日が待っているような気がして、俺は期待に胸を弾ませた。