入社式の今日、新社会人として働くはずだった会社が、倒産してしまった。

「嘘だろ……」

 会社の前には、テレビ局のカメラマンが大勢殺到していた。
 表向きは順調だったその会社の業績は、火の車。おまけに社長が大規模な粉飾決済を行っていたらしく、騙されて取り残された社員たちは泣いたり叫んだりして大騒ぎだった。

 俺はよろよろとした足どりで、帰路につく。どこをどうやって歩いて家まで帰ったのかすら、まともに覚えていない。

 気がつくと、俺は自宅の前でぼんやり突っ立って佇んでいた。
 うちは二階建ての一軒家で、敷地だけは無駄に広い。重厚感のある塗り壁に、昔ながらの屋根瓦。和風のどっしりとした佇まいのこの家は、もともとは祖父の持ち家だった。

 今ここに住んでいるのは、俺と妹の鈴芽(すずめ)だけだ。

「ただいま」

 居間に入ると、鈴芽はテレビを見ていた。
 彼女は俺と目が合うと、あからさまにぷいと顔をそらす。

「……あの、鈴芽、大事な話があるんだけど」