病室へ入ると、母が何か眩しそうな目で俺を見てきた。
「何だよ。その目」
「んーん。さっき女の子と喋ってたでしょ。美緒ちゃんだっけ?」
嫌味っぽく言ってくる。
「ああ、そうだよ。で、何」
俺がふてくされて言うと、母はますます面白そうにした。
「美緒ちゃんって、クラスメート?それともカノジョ?」
「カノジョとは何だよ!ただのクラスメートに決まってるだろ!!」
体中が熱い。
「もしかして拓海、美緒ちゃんのこと、気になってるんじゃない?」
「…まぁ」
母がふっと笑う。
「まっ、拓海も高校生だし、そういうのがあってもいいんじゃない?」
すごく居心地が悪くなった。その後の母の問いは、適当な返答をして、
「俺、帰るよ」
ドアへ向かう。
「ちゃんと、気持ち伝えるのよ!」
「だからッ」
「はいはい、帰った帰った」
結局、母のペースのままだった。何か楽しそうな笑い声を俺は病室を出た。