剣斗が試合をしている。
その様子を見つつ、俺は面をつけて出番を待っていた。
そんな俺に野嶋先輩が、

「長谷川。お前の相手の吉良(きら)は強い。でも、十分にチャンスはある。じっくりやるんだ」

と言ってくれた。

「おいっ、見ろよ! 」

横井先輩の声で振り返ると、剣斗が一本取っていた。さすがだ。

その後は両者とも一歩も譲らず、試合が終わって、1本勝ち。
いよいよ、俺の番だ。


試合場に入り、礼。
3歩進んで中央の開始線に立つ。
相手と呼吸を合わせて、蹲踞する。
短い沈黙。
その間に集中力を研ぎ澄ます。

準備は、できた。