聞き慣れたアラームの音がして、俺は目を覚ました。
眠い目を擦って時計を見ると、6時50分を指していた。

『ヤバっ、遅れる!』

掛け布団を跳ね除けて起き上がり、アラームを止めて、一階のキッチンへ駆けた。
昨夜(ゆうべ)の残りのカレーをかき込み、身支度を整え家を飛び出した。

自転車で飛ばして学校へ行くと、何とか部活に間に合い、約1時間稽古した。
稽古は基本の打ちが多く、俺には物足りないくらい。もっと刺激的な稽古ができたらいいのだけれど……まあ、朝っぱらからやる必要もないだろう。

稽古かわ終わり、防具や手ぬぐいを取っていると。

「拓、今日も調子良さそうだったなぁ!」

と、弾んだ調子で声を掛けられた。
俺のことを「拓」と呼ぶのは、たった1人しかいない。中学から一緒の相澤剣斗だ。
剣斗って、生まれた時から剣道やるって決められていたような名前だなって、つくづく思う。こいつもなかなかの腕前で、この部の副将だ。

「この調子なら、一本ビハインドで回しても問題なしだな!」

ーーーおい!

流石(さすが)にやめてくれよ。問題あり。大問題」

そう言う俺の声も、なんだか上ずっていた。
ちなみに俺は、大将をやっている。3年は1人しかいないし、2年は5人中3人がケガをしている状況で、団体戦5人の残った2枠に、俺と剣斗が入ったって訳だ。
高校最初の試合が明日にせまり、今日は最後の調整日。

「安心しろ。俺らの前には、3人先輩がいるんだ。そんな状況にはならない」

剣斗が自信たっぷりに言う。そりゃあ、先輩方には勝ってもらわないと困る。少なくとも。
ってか、そういうお前はどうなんだよ、お前は。

「もちろん勝つぜ。俺も」
「フンっ。それは頼もしい」

笑いながら道場を出た時には、始業10分前のチャイムがなっていた。