練習後の家までの道は、とても長く感じる。それでも一歩一歩進んで、やっとの思いで家にたどり着いた。

「ただいまー」

俺は言いつつ玄関のドアを開ける。とは言っても、家に誰かいる訳でもない。
父は単身赴任中で、母だって働きに出ているし、妹の沙苗(さなえ)も、都会の私立中学に通っているから、俺がいつも1番早い。

金銭面では苦しいはずだけど、子供にはきちんと教育を受けて欲しいというのが、両親の考えだ。それは良いのだけど、俺は毎日、冷凍食品ばかりの食事をする羽目になっている。
かと言って、俺が自分で作ろう、という気にもなれない。
身体には悪いだろうけど、母が帰ってくるまで待つのはキツイから、結局いつもそうだ。

俺は冷凍パスタを皿に盛って、1人ダイニングで食事をすませると、自室にこもった。


翌朝起きると、キッチンでは母が弁当を用意し終わったところだった。
俺はコンビニ弁当でいいと思うのだが、これも母のこだわりで、手作りの物を持たせたいと、帰りが日付けの変わった後だとしても、きちんと持たせてくれる。

「おはよー」
「ん、峻輝おはよ」

ダイニングテーブルには、トーストがスクランブルエッグと共に皿に盛られ、置かれている。
俺はそれを口に運びつつ、時計を見た。
6時45分を指している。急いでトーストとスクランブルエッグを平らげて、着替えると、母の作ってくれた弁当を鞄に詰めて、家を出た。

「行ってらっしゃい!」

母の声が、背後から聞こえた。